ピラティスは、腰痛改善に多くのメリットをもたらしますが、その一方で、自己判断で始めてしまうと、かえって症状を悪化させかねない「危険な腰痛」も存在します。ピラティスは運動療法であり、医療行為ではありません。以下に挙げるようなサインが見られる場合は、まず整形外科などの医療機関を受診し、医師の診断と指示を仰ぐことが絶対条件です。まず、最も注意すべきなのが、「急性の激しい痛み」を伴う腰痛、いわゆる「ぎっくり腰(急性腰痛症)」です。発症直後の炎症が強い時期に、無理に体を動かすと、炎症を助長し、回復を遅らせてしまいます。この時期は、安静が第一であり、ピラティスは禁忌です。次に、「安静にしていても痛む、夜間に痛みで目が覚める」といった腰痛です。通常の筋肉や関節由来の腰痛は、楽な姿勢を取れば痛みが和らぐことが多いですが、どのような姿勢を取っても痛みが続く、あるいは悪化する場合は、脊椎の腫瘍(がんの骨転移など)や、感染症といった、重篤な病気の可能性(レッドフラッグサイン)を疑う必要があります。また、「足のしびれや麻痺、力が入らない」といった、明らかな神経症状を伴う腰痛も、慎重な判断が必要です。椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が原因である場合、ピラティスが有効なケースもありますが、症状の程度によっては、神経への圧迫を強めてしまう危険な動きも存在します。特に、「排尿や排便がしにくい(排尿・排便障害)」といった症状が現れた場合は、緊急手術が必要な「馬尾症候群」の可能性があり、直ちに救急外来を受診しなければなりません。このほか、骨がもろくなっている「骨粗しょう症」の方が、不用意に背骨を丸めたり、ひねったりする動きを行うと、「圧迫骨折」を引き起こす危険性もあります。自分の腰痛が、ピラティスを行っても安全なタイプなのかどうか。その判断は、必ず専門家である医師に委ねるようにしてください。