なぜ登山の「下り」で膝は痛むのか?痛みのメカニズムを知る
素晴らしい景色と達成感を求めて山に登る。しかし、多くの登山愛好家を悩ませるのが、下山時に襲ってくる、あの忌まわしい膝の痛みです。登りではそれほどでもなかったのに、なぜか下りになると、膝の外側や内側、あるいはお皿の下がズキズキと痛み出す。この現象には、明確な理由が存在します。私たちの膝は、登りの際には、主に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を収縮させながら、体を上に持ち上げる「コンセントリック収縮(短縮性収縮)」という動きをします。これは、筋肉にとっては比較的得意な動きです。しかし、問題は下りです。下山時、私たちは、重力に引かれて加速しようとする体を、常にコントロールし続けなければなりません。この時、大腿四頭筋は、力を発揮しながらも、筋肉の長さとしては引き伸ばされるという、「エキセントリック収縮(伸張性収縮)」、いわば“ブレーキをかけながら”筋肉を使うという、非常に特殊で、かつ負荷の高い動きを強いられるのです。このエキセントリック収縮は、筋肉に大きな負担をかけ、筋繊維の微細な損傷を引き起こしやすいとされています。さらに、下りの一歩一歩で、膝関節には、体重の3倍から5倍もの衝撃がかかると言われています。この強力な衝撃を、疲労した筋肉が十分に吸収しきれなくなると、その負担は、膝の軟骨や靭帯、半月板といった、関節そのものに直接のしかかってきます。これが、下山時に膝痛が多発する、最大のメカニズムなのです。痛みの原因が、単なる気合や根性の問題ではなく、このような明確な身体の仕組みにあることを理解すること。それが、効果的な対策と予防への、最も重要な第一歩となります。