無事に下山し、登頂の喜びに浸る。しかし、膝痛対策は、まだ終わっていません。登山後の「アフターケア」を、いかに丁寧に行うかが、次回の登山を快適に楽しめるかどうか、そして、慢性的な膝の痛みに発展させないための、重要な分かれ道となります。登山後の膝の周りには、たとえ強い痛みを感じていなくても、筋肉や関節組織に、目に見えない微細な損傷や炎症が起きている状態です。この初期段階の炎症を、いかに早く鎮静化させるかが、回復の鍵を握ります。そのために最も効果的なのが、「アイシング(冷却)」です。下山後、できるだけ早いタイミングで、ビニール袋に入れた氷や、冷たい水で濡らしたタオルなどを、膝のお皿の周りや、痛みを感じる部分に、15分から20分程度当てて冷やします。これにより、炎症の広がりを抑え、腫れや痛みを軽減することができます。次に重要なのが、「クールダウンのストレッチ」です。登山で酷使し、硬く収縮した太ももの前(大腿四頭筋)、裏(ハムストリングス)、お尻、ふくらはぎの筋肉を、ゆっくりと時間をかけて伸ばしてあげましょう。ただし、痛みを感じるほど強く伸ばすのは逆効果です。あくまで「気持ちいい」と感じる範囲で、深い呼吸と共に行うのがポイントです。これにより、筋肉の血行が促進され、疲労物質の排出が促されます。また、帰宅後の入浴は、熱いお風呂に長時間浸かるのは避け、ぬるめのお湯で軽く汗を流す程度にするか、アイシングを優先して、シャワーで済ませるのが賢明です。そして、食事では、傷ついた筋繊維を修復するための「タンパク質」や、体の炎症を抑える抗酸化物質を多く含む野菜や果物を、意識的に摂取しましょう。もちろん、十分な「睡眠」をとって、体の回復に専念することも忘れてはなりません。登山は、家に帰るまでが登山。そして、次の登山は、下山後のケアから始まっているのです。
登山後のケアが重要、膝をいたわるアフターケア術