信用できる整形外科とは?

2026年3月
  • 膝痛を乗り越えて、再びあの頂へ。ある登山者の物語

    医療

    私が登山にのめり込んだのは、30代の頃でした。週末ごとに、仲間たちとリュックを背負い、汗を流して登った先で見る、息をのむような絶景。あの達成感と、大自然に抱かれる感覚が、何物にも代えがたい私の生きがいでした。しかし、40代を過ぎた頃から、その至福の時間に、影が差し始めました。下山時に、必ず右膝の外側が、まるでナイフで刺されるように痛み出すようになったのです。最初は、気のせいだ、疲れているだけだ、と自分に言い聞かせていました。しかし、痛みは山行のたびにひどくなり、ついには、下りの一歩一歩が、恐怖に変わってしまいました。整形外科では、「腸脛靭帯炎」と診断され、「まずは休むこと、そして筋力不足ですね」と、あっさりと言われました。その日から、私の心は、山から遠く離れてしまいました。もう、あの頂からの景色を見ることはできないのか。そんな絶望感に、数年間、苛まれました。転機が訪れたのは、ある日、登山専門店の店主と話した時でした。「道具と歩き方を変えるだけで、世界は変わりますよ」。その言葉に、藁にもすがる思いで、私は、専門家のアドバイスを一つひとつ実践し始めました。まず、自分の足に合った、クッション性の高い登山靴と、オーダーメイドのインソールを作りました。そして、理学療法士の指導のもと、地道な筋力トレーニングを開始。スクワットでお尻の筋肉を意識すること、ストレッチで股関節の柔軟性を取り戻すこと。驚いたのは、私の膝痛の原因が、膝そのものではなく、股関節の硬さにあったことでした。さらに、人生で初めて、トレッキングポールを2本購入し、その正しい使い方を、動画サイトで徹底的に学びました。そして半年後、私は、恐る恐る、近所の低い山へと向かいました。下り坂、教わった通りに、歩幅を小さく、ポールで体を支え、一歩、また一歩。そして、無事に下山した時、私は気づきました。あの忌まわしい痛みが、全くないことに。涙が、溢れてきました。膝痛は、私に、山を諦めさせるための試練ではありませんでした。自分の体と向き合い、その声に耳を傾け、賢く付き合っていく方法を教えてくれるための、大切なメッセージだったのです。今、私は再び、あの頂を目指しています。以前よりも、少しだけゆっくりと、しかし、遥かに深く、山を味わいながら。